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のっぺらな午後 [百鬼徒然箱]


それは、土曜日の午後。
休日の時間が一番弛んだ頃のこと


ソファの上の幸せなうたた寝を台無しにしたのは
玄関の耳障りなチャイムの音だった


おそらく家内が対応するだろうと
ソファの上で寝たふりを決めこもうとしたところに
もう一度不躾なチャイムの音


仕方なくヨロヨロとキッチンに向かうと
キッチンの窓の向こうで人影が揺れていた
どうやら家内は外で洗濯物を干しているらしい


起きぬけの薄っすらと霞んだ意識の中で
キッチンの入り口にあるインターフォンの通話ボタンを押した


モニターには
長い黒髪の小柄な女が写っていた
必要以上に濃い前髪のせいなのか
極度の猫背のせいなのか
女の表情はほとんど読み取れなかった


「はい」
警戒の色を滲ませながら返事をする
「わたくし善人会からまいりました
本日はあなた様の幸せについて。。。」
脱力とともに思考回路が停止した
地味な見た目からは想像もつかないような
明朗な声で女の話は続くが
鼓膜の振動は心には到達しない


女の話が途切れた瞬間に
間髪を入れずに
ありったけの感じ良さをこめて
「申し訳ありませんが、今手が離せなくて」
「そうですか、こちらこそ申し訳ありませんでした
それでは小冊子を郵便受けに入れさせていただいて
よろしいでしょうか?」
「はい、構いませんよ」


紫色の紙片を郵便受けに入れると
「ありがとうございました」
言いながら女は初めて
インターフォンのカメラに向かって正対した


ボリュームのあり過ぎる前髪の下の女の顔は


顔は無かった


というか
目も鼻も口も無かった


ただ
のっぺりとした肌色が
微笑んでいる
ように見えた


一瞬
冷たい腕に背後から抱き締められたような気がした
指先から始まった震えが全身に広がっていく


慌てて駆け出し玄関のドアを開けたが
女の姿はなかった
家の前の道路に出て左右を注意深く見回したが
何処にも女の姿はなかった


おそるおそる郵便受けをのぞいたら
見慣れない紫色の大きな葉っぱが一枚
入っていた


しばらく動けなかった


意識が
絶え間なく押し寄せる青黒い荒波に
為す術もなく弄ばれていた


握り締めた拳の中は冷たい汗


おぼつかない足取りで家の裏手に回り込むと
家内はまだ洗濯物を干していた


「誰だったぁ?」
こちらに背を向けてバスタオルを干しながら
彼女はのんびりと問いかけてきた


とっさに返す言葉が探し出せず
「の、のっぺらぼう。。。だった」
やっとの思いで絞り出した


「あなた、さっきまでうたた寝してたでしょ
寝ぼけたんじゃないの?」
笑えないジョークに嫌々反応するように
彼女は嘲笑まじりに返してきた


「でも、ゼッタイ見たんだ」
舌が思うように回らずに
子供のような口調になってしまった


「こんな真っ昼間から?」
こちらに背を向けてバスタオルをパンパンと叩きながら
彼女はもう相手にしてくれなかった


説明のしようがない


この世に不思議なものなんて存在してはいけないのだ


身体の芯の震えがおさまらないまま
仕方なくすごすごと踵を返そうとしたら


「もしかしてさぁ」
と呼びとめられた


「その女って
こんな顔してたんじゃない?」


洗濯バサミを持ったまま振りかえった
家内のゆるい巻き毛の下の顔は


顔は無かった




**********



と、まあ
これが「再度の怪」といって
「のっぺらぼう」を語る時によく使われる怪談の手法w


「のっぺらぼう」はムジナやキツネやタヌキが化けたものとされているが
ただ人を驚かすだけで実害はなかったみたいだ


「のっぺらぼう」のお仲間は日本各地にたくさんいるようで
朱の盆・ずんべら坊・尻目・ぬっぺふほふ・お歯黒べったり、などなどの
豪華ラインナップであるww



**********



のっぺらぼう



クレンジングの新製品を
試しに使ってみたら
目も鼻も口もスッキリ落ちて
チョー焦った

でも
たいしたパーツじゃないし
描いたほうが可愛いから
まあ いいかなぁ

べつに
あたしだけじゃないみたいだしね

ホラ
あそこのウサミミの子

そそっ
鼻の下が垂れ下がった男に
巻きついてるあの子も

同じ穴のムジナだよ






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